推理~探偵~ (9/13)
あー、寒い。
俺は手の中の缶コーヒーを転がしながら自分の吐き出した白い息を見た。
もう冬が近いよなぁ。
今は車の外に出て茂みに隠れているところだ。
本当は車の中に居たかったが、美代子が痺れを切らしたのか外に出たいと言い出したのだ。
だから俺はこんなに寒い思いをするハメになっている。
もう午前二時だし痺れを切らすのも無理はないが、張り込みとはこんなものだ。
精神力と体力との勝負。
己に負けるなってね。
美代子も時折手をさすりながら寒そうにはしているが、相当我慢強いな。
午前二時十五分。
和夫と真由美がホテルから出て来た。
「さ、行きましょう。」
俺は缶コーヒーをその場に置き、美代子と共に茂みを出た。
その時
突然真由美がその場に倒れこんだ。
ん?
俺は不思議に思いながらも和夫達のもとへ駆け寄る。
和夫は俺達に気付かずに倒れた真由美を揺すっていた。
「真由美!おい、真由美!どうしたんだ!」
そばまで来ると和夫の叫びが聞こえる。
「ちょっとどいてくれ。」
俺は倒れた真由美に駆け寄る。
後ろでは早速美代子が和夫に罵声を飛ばしているがそれは後回しだ。
真由美の口元に手をかざす。
息は…ない。
今度は首に手をあてる。
脈…なし。
死んでいる。
「真由美は!真由美は大丈夫なんですか!?」
和夫は美代子に胸ぐらを掴まれた状態で俺に投げ掛けた。
「いや、全然。死んでるよ。」
こともなさげに言うと和夫はその場に泣き崩れた。
だが、あんたなんて構ってる暇はない。
これはどう見ても他殺だ。
ポケットからハンカチを取り出すと、真由美の首に刺さっている小さな針を抜き取った。
凶器はこれ。
針自体に殺傷能力はないようだが、恐らく針先には毒が塗ってある。
苦しむ様子もなく倒れたところを見ると、殺傷能力は非常に高い毒物だろう。
「警察、呼んで下さい。」
俺はそのまま針をハンカチに包むと胸ポケットへと慎重にしまった。
和夫は慌てて警察へと電話をかける。
また面倒なことになったなぁ。