推理~多重人格者~ (19/21)




私はまばらに集まる参列者に頭を下げる。


参列者は皆、列に並び代わる代わる焼香をあげていった。





あの日、あつしが背中越しに答えられぬ質問を投げ掛けてきたあの日。



私は、あつしが出ていくのを黙って見送った。


本当はそこで止めておくべきだった。


例えあつしが真実を知りたがったとしても、足にしがみついて止めるべきだった。




私はあつしを、いやショウを家に引き取ったときから全てを知っていた。


ショウから全てを聞き、そしてショウの考えを尊重し、あつしには真実を伝えずにいた。



自分で道を選んで欲しかったのだ。



でもまさかこんな結末になるなんて思ってもみなかった。



翌日の早朝、警察からの電話であつしが自殺したことを知った。


検証の結果、学校の屋上から飛び降りたことがわかった。


死んだあつしの胸にはあの日記が抱えられていたらしい。



あつしは殺人という一生背負っていかなければならない罪に耐えきれなかったのだろう。




自分の手で殺人を犯したことを知るのはどれ程つらいことだったのだろう。




そう思いながら遺影を見つめると涙が赤くなった目からこぼれて頬を伝った。



ごめんね、あつし。







「あの…今少しお時間いただけますか?」




男性の低く太い声の呼び掛けに、私は慌ててハンカチで涙を拭いながら顔を上げる。



男は腰を低くして、名刺を差し出して来た。




どうやら保険会社の人のようだ。



正直、保険の話なんて今はしたくない。


あつしが死んで間もないので、頭の整理が着いていないのだ。



このまま追い返してしまおうか。





私は少し迷った後、結局男を奥の部屋へ案内した。



どうせ今日追い返してもまた来るのだろう。



それに私の頭の整理も当分の間つきそうにない。



だったら今日話を聞いて早く済ましてしまおうと思ったからだ。



男は机の向かい側に着くと早速資料を広げだした。



私もゆっくりと腰を下ろして男と向き合った。