推理~主婦~ (5/11)

「明日は何時頃になるの?」



私は食器を洗いながら夫に背を向けて言った。



「明日は大事な会議なんだ。遅くなる。」



「そう……。」


夫は遅くなると言った。




正確な時間を言わないのはきっと浮気相手と会うからだろう。



本当に会議なら大体の終わる時間くらいわかるはずだもの。



言いがかりに聞こえるかもしれないけど、今の私は歯止めが聞かないの。


「風呂入ってくるよ。」



夫はゆっくりと立ち上がってリビングを出た。




男が先に風呂に入るのも夫が決めた家のルールである。



間もなくシャワーが流れる音が聞こえてくると、私は迷わず夫の鞄をあさって中から携帯を取り出した。




ごめんなさいね、あなた。



他人の携帯を見るなんていけないことだとはわかってるわ。



でも



あなたがいけないんだからね。



全てあなたのせいよ。





メールボックスには上司や知人に混じって女の名前があった。



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まゆみ
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RE:仕事お疲れ様です♪ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
お店調べてみましたよ!

詳細は明日お話します。

おやすみなさい(^_-)-☆

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まゆみ。


メールからして若いみたいね。


仕事お疲れ様ってことはきっと浮気相手は社内ね。



お店はきっとデート関係。



そしてメールの日付は今日だから……。





明日がデート。





私は黙って夫の携帯を鞄に戻してカレンダーを見る。




明日。




明日は結婚記念日。




そんな日にデートなんていい度胸ね。




私はただの家事をこなす都合のいい女なんだわ。





悲しくもあり、憎らしくも思った。



夫のことは真剣に愛していたからだ。



でも、夫を追い詰めていくような感覚に私はそれ以上の快楽や優越感を感じていた。






その後夫が風呂から出ても今まで通りに接した。



何たって明日はあなたの命日だから。

明日で完全な証拠を持ってして夫を葬り去る。

結婚記念日に殺されるなんて夢にも思ってないでしょうね。




だから最後くらい楽しく、明るく。


深夜11時。

「じゃあ、おやすみ。」


夫はそれだけ言うと私に背を向けて寝た。



「ええ、おやすみ。」








私も夫に背を向けた。