推理~主婦~ (6/11)
「いってらっしゃい。」
「ああ……。」
またいつもと同じセリフだが今日はいつもと違った。
はつらつとした、どこか突き抜けたような気分だ。
夫が家を出た後、私は一通りの家事を済ませてからテレビを見たり、ベランダの花に水をあげたりと、とてもゆったりとした時間を過ごした。
そしていつの間にか日は沈み、あっという間に夜の9時を回っていた。
当然、夫はまだ帰ってきていない。
私は行動に出た。
夫の会社に電話をかける。
もし会議ならまだ夫は会社にいるはずだ。
「はい、丸吉株式会社です。」
電話に出たのは若い女だ。
「もしもし、田原の妻ですが家の夫はまだそちらにいますでしょうか?」
「少々お待ち下さい。」
そう言って、電話の向こうの女は受話器を置いたようだ。
早く。
早く。
私は手に汗を握って、まるでゲームのような感覚に陥っている。
待っている数十秒が、何十分にも感じられた。
そして
「お待たせいたしました。田原課長は8時頃にお帰りになられたそうです。」
やった。
私は証拠を掴んだ!
「そう……ありがとう。」
そう言って受話器を置くと狂ったような笑いが漏れ出した。
しかし、同時に涙もとめどなく溢れ出た。
なんだかんだ言ってもやっぱり悔しいし、悲しい。
でも追い詰めるのは楽しい。
表現出来ないようなこの感情が私を狂わせたのだ。
ああ、死にたい。
そして、殺したい。
笑いながら泣いて、泣きながら笑う。
その後、私は一時間程狂った感情を抑えられずに笑い、泣き、叫び続けた。