推理~主婦~ (4/11)
「ただいま。」
夫の低い声が玄関のほうから聞こえる。
私はエプロンをしたままパタパタと玄関へ向かった。
「お帰りなさい。お疲れ様。」
玄関に来てすぐに気付いた。
香水臭い。
ニオイ取りの消臭元とはまた違った濃くて鼻をつく臭いだ。
浮気。
その言葉がまた私の頭を駆け巡り、私はその場で固まってしまった。
「……?どうした?」
夫は不思議そうな顔をしながら私の横をするりと抜けてリビングへ。
「……何でもないわ。」
微かに呟いたが夫には聞こえていないだろう。
浮気。
見つけてやる。
相手の女も夫も絶対に許さない。
そうだ。
殺してしまえ。
私は黒い決意をして夫の後を追った。
「あなた、スーツ掛けとくわ。」
まずはこの香水の匂いから確認だわ。
夫は何もためらう事なく私にスーツを渡した。
私は夫をリビングに残し、スーツを持って寝室に入る。
そして夫のスーツに顔を埋めた。
うん、間違いない。
香水の匂いは夫のスーツについていたものだ。
浮気の疑惑がどんどん確証へと変わっていく。
それが、少し嬉しく感じて思わずくぐもった声で笑った。
気分は謎解きをする探偵である。
私はスーツをハンガーに掛けて何事もなかったかのようにリビングに戻って夫と夕食を食べた。