推理~多重人格者~ (11/21)
僕はスコップを肩に担ぎながら自転車を全速力で漕いで中学校へと向かう。
空白の一年。
やっとわかった。
僕は記憶が無くなったのではない。
元からそんな記憶存在しなかったのだ。
すなわち空白の一年間は、僕の中にある3人の人格が僕を支配していた。
そして一年たってやっと僕に身体の支配権が戻ってくる。
僕の一年間の記憶はないし、僕の中に3人の人格が出来たことをそこで始めて知る。
これで記憶の無い一年、言うなれば偽記憶喪失の完成って訳だ。
僕は右ポケットの古い箱に視線を落とす。
きっかけはこの箱の埃。
この箱に物置に置かれた他の物と同様埃が被っているということは、この箱も長い間動かされていないことになる。
家族写真と同じようにだ。
ということはずっと前から僕宛てのこの箱は存在したことになる。
あの、空白の一年から。
僕が空白の一年を知りたがった。
途端に表れたこの箱。
都合が良すぎるんだ。
つまり、空白の一年の時に僕の中の人格が僕宛てにその一年に起きたことを書いたものが中学校にあると思うんだ。
分かりやすく言えば未来への手紙って感じかな。
やっと僕の一年が帰ってくる。
高まる気持ちを押さえて自転車を漕いだ。
そして、とうとう中学校の前までやって来た。
僕は自転車を降りて裏庭に向かって歩きだした。