推理~多重人格者~ (9/21)
テーブルにはすでに夕食が並んでいた。
今日はおばさんの得意な唐揚げのようだ。
ちなみに僕の大好物でもある。
僕はものの15分で唐揚げをすべて平らげると、まずポケットから物置に眠っていた家族写真を取り出した。
「おばさん、今日物置からこんなもの見つけたんだけど、なんであんなところに?」
おばさんは静かに写真を持ち上げると写真の中の僕の頭を人差し指で軽く撫でて少し微笑んだ。
「これはねぇ、あつしが家に来たときに一緒に持って来たものなんだけど、あつしがこれを見て悲しい気持ちにならないようにおばさんが倉庫にしまって置いたのよ。」
ということは僕が記憶喪失になった頃の話か。
どうりでこの写真のことを知らないわけだ。
「そっか…」
僕は写真をポケットに戻して、皿を台所に運んだ。
おばさんの皿も下げていつも通りに皿洗いをし始める。
「ねぇおばさん。」
僕は皿洗いをして背をむけながら話掛ける。
「僕ってさ…本当に記憶喪失なのかな。」
そうだ、きっと僕は記憶喪失なんかじゃない。
確信ではないが疑問には思った。
おばさんから写真の説明をされても、実際に写真を見ても記憶の片鱗すらないのだ。
もしかしたら何も思い出せないのではなく、そんなこと僕はしていないんじゃないのか。
おばさんからの返事はない。
重苦しい空気をただ水が流れる音が支配した。