推理~多重人格者~ (3/21)
「ただいま。」
僕は古風な引き戸を開けて石畳の玄関に入る。
ここは僕の生まれ育った家ではない。
両親が死んだ後から僕を引き取ってくれた親戚のおばさんの家だ。
おばさんの旦那さんは僕がこの家に来る前に他界してこの世にはいない。
だからおばさんと僕で家事を分担して今までどうにか生活してきた。
おばさんには僕を引き取ってくれて本当に感謝している。
「おかえり、あつし。」
おばさんは台所の方からエプロンをしたまま出て来て僕に優しい笑顔を向けた。
僕はおばさんに手を挙げて答えて二階の自分の部屋に向かう。
部屋に入ると鏡の前に立つ。
あれ、頬に殴られた痕がある。
きっと不良にやられたんだな。
僕はポケットからハンカチを取り出して痣をさする。
全く、僕の体なんだから大切に扱ってくれよな。
そう思いながら鏡をしばらく見ていると後ろの机に何が置いてあることに気付いた。
ん?
僕こんなの持ってたっけ?
そう思って少し古びた箱を持ち上げて振ってみる。
カタカタと乾いた音を立てるその箱はあまり重くはない。
僕は深い考えを持たずに箱を開けた。