推理~多重人格者~ (2/21)
先程も言ったように、不良をやっつけた記憶が飛んでいるのはアキラが僕を支配したからである。
外見では僕だが中身は僕ではない。
多重人格ってのは難しい。
まず、僕の体の中には僕を除いて三人の人格が住んでいる。
一人はアキラ。
短気で暴力的。
言葉遣いも乱暴だ。
歳はわからないが結構若いんじゃないかと思う。
二人目はユウキ。
先程も言った通り小学生くらいの元気な男の子だ。
僕とは1番気が合うし、よく話してくれる。
そして三人目はショウ。
常に落ち着いていて、恐ろしい程頭がキレる。
年齢はわからないが、僕も含めて僕達の人格を統制していることを考えると、1番年上だろう。
統制というのはいわば司令官の役割であり、僕が体を使うのも他の人格が体を使うのも、全ての決定権はショウにある。
僕の体なのに決定権が僕に無いのは不思議でしょうがない。
まぁ、これも年功序列なら仕方ないことなんだろうか。
そもそも僕は元々一人だった。
しかし、16歳を境にして突然三人の人格が現れた。
そして現れる前の一年間の記憶がぽっかりと抜け落ちている。
医師にはショックによる記憶喪失だと診断された。
そしてその一年の間に
父と母が死んでいた。
きっとショックとはこれだろう。
死因は自殺と後から親戚に聞かされたが、もちろん整理がつくわけがない。
一年も記憶がなく、知らぬ間に母と父は死んでいたんだ。
整理なんかついてたまるか。
さらに突然現れた三人の人格。
僕の生活は荒れに荒れた。
現実を受け止められるはずもなく、毎日を無力に生きていた。
もう死のうかと考えたこともあった。
しかし死のうとすると他の人格と入れ代わりそれを阻止され、どうすることも出来なかった。
そんなこんなで僕は今年で二十歳になる。
僕はこのままじゃ嫌だ。
知らない間に体が他の人格に支配されているのが堪らなく怖い。
気が付いたら時間が、日付が勝手に進んでいるのが堪らなく不安になる。
そして
僕が知らない間に僕は死んでしまうんじゃないのかと、そんなことも考えてしまう。
僕は、一人に戻りたい。
だから僕の空白の一年を知る必要がある。
空白の一年を知ることで一人に戻れる気がするんだ。
今の僕ならもうそれを受け止め切れるんじゃないか。
いや、受け止められるよな。
そうだろ、みんな。
僕は胸に手を当てた。
今度は誰からも返事はなかった。