君のためなら (9/26)

「だからわたしも気持ちを伝えるなら、琴音と同じく手紙を選ぶよ」


「ヨっくんと万里子は小学生の時にそれを理解していたんだろうね、感覚的に」



「なんか難しい話になっちゃった」

そういって彼女は申し訳なさそうに舌を覗かせた。


「ううん、万里子ってすごいんだなって感心しちゃった。ヨっくんのこと忘れられないのもわかる」





「好き、って言葉を使わなくても、わたしとヨっくんは気持ちを通わせることが出来たの。本物の両想いだったなって思う」

照れもせず万里子はそう締めくくった。

そして途端に顔を曇らせて言った。

「だから、余計にショックだった……再会したのに、ヨっくんは逃げるみたいにどっかに行っちゃった……せっかく会えたのに」



万里子は俯いた。

気まずい空気が流れた。
何と慰めていいのかわからなかった。



「あ、ごめんごめん。暗い話にするつもりなかったんだけど」

万里子は謝った。


「気にしないでよ万里子。そういう事を言い合える仲じゃん私たち」


私は努めて明るく笑って言った。

どうしようもない悩みをお互い抱えていて、どちらも解決策なんか無い。
でも気持ちはスッキリしていた。



「話したら少し楽になった、ありがとう琴音」



「いえいえこちらこそ!さて!失恋にはスイーツだよ万里子!」




私たちは気分を切り替えるため、お店を出た。

短く切った髪は風を切るようになびく。


「次はサーティーワン!」



みのりとの事も、もうどうでも良くなっていた。
私には親友がいる。
明日から新しい友達作りに励むのも良いと思えた。





久しぶりに心が温かくなった、日曜日の午後だった。