君のためなら (10/26)

翌日、月曜日。

万里子と遊んだせいか、家を出る前は気分が晴れていた。


「昨日は楽しかったのね、良い顔してる」

いってらっしゃい、と母に見送ってもらった。



しかし、学校に登校してすぐ、気持ちがどんよりと曇った。
その原因はもちろん、みのり。


教室に入った私の目に飛び込んできたのは、仲良くおしゃべりをしているみのりと甘橋さんだった。

おしゃべりといっても、話しているのはみのりで、甘橋さんはそれに相槌を打つ。

その光景を見て、やっぱりこうなったかと思った。
2人の会話に入っていける気がしない。

私を拒んでいる気配さえある。




万里子が一緒にいた昨日は、みのりの事なんて忘れていた。
でも、現実はそう甘くはなかった。

今なら万里子の気持ちがわかる。

転校してからはヨっくんの事は忘れていたと言っていたけど、心の底ではそうじゃなかったんだ。



万里子はいつも明るい。
辛い事があってもだ。

私も頑張らなくちゃ。
そう自分に言い聞かせた。


1日が始まってみると、休憩時間以外は以前と何も変わらないことに気づく。

休憩時間は1人で席に座っていた。
こういうのも良いか……




みのりが甘橋さんから離れ、教室を出て行くのが目の端に映った。
トイレだろうか。


私には関係無いけど……


次の授業の予習でもしよう。
憂鬱な気持ちを切り替えるために胸に溜まっていた息を吐き出した。





そんな時、名前を呼ばれた。


「小原さん、髪切ったんだね」


顔を上げると甘橋さんが立っていた。
綺麗な顔で私を見下ろしていた。


彼女は座っている私の目線まで腰をかがめた。
そして内緒話をするように顔を寄せてきた。