君のためなら (7/26)
いじめられていた彼を助けた。
それが万里子とヨっくんが仲良くなったきっかけだという。
いじめられていたというより、彼はハブにされていたようだ。
いわゆる仲間はずれだ。
ヨっくんは男の子にしてはひょろっとした体つきで、色も白かった。
さらに顔が整っていて、他の小学生には無い雰囲気を放っていたという。
その外見の貧弱さは、周囲の生徒からの格好の獲物となったわけだ。
万里子曰く、他の男子生徒は彼の美貌に嫉妬していたのではないか、とも言っていた。
私が彼の写真を見せてと、せがんだ事もあったが、見せてもらった事はない。
そこに何らかの理由があるのは間違いない。
そんなヨっくんに、クラスメイトと分け隔てなく接していた万里子が救いの手を差し伸べた。
万里子がヨっくんと仲良くし始めると途端にいじめもハブもなくなったという。
小学生なんてそんなものかもしれない。
万里子がヨっくんと打ち明け始めた直後に、彼女は転校した。
それから文通が始まった。
転校してから月に1度、2人は手紙を送りあった。
万里子はヨっくんとの文通を通して、人の温かさとは何かを学んだという。
「そこに彼を忘れられない理由があるの」
彼女は手紙について熱弁してくれた。