君のためなら (6/26)

「えっ」

まさかとは思った。

2人は再会したんだ……
私はなぜか切なくなった。



「すごいでしょ?5年振りくらいになるのかな。友達とショッピングモールに買い物に行った帰りにね。びっくりしちゃった」

万里子は少しおどけたように両手を広げた。



「それで、会って何か話したの?」

話の続きが気になって仕方なかった。
しかし、彼女は口元に哀しみを滲ませて、力なく首を左右に振った。


「彼がそこで何をしていたのかはわからないけど、わたしと目が合った瞬間に逃げるみたいに去っていったの」


駅前の人混みの中に青年が消えていくシーンを想像した。
私は彼の顔を知らない。



「人違い……だったとか?」


「ううん。見ればわかる。それに明らかにわたしを見て何かを思い出したみたいに、目を見開いてた」


「追いかけたの?」


……うん。でも見失っちゃった。人通りのない暗い道の方に行ったんだと思う。危なそうだし、それ以上追いかけるのはやめたの」


語る万里子の表情に明るさを維持する意思は感じられなかった。
相当ショックだっに違いない。


それから万里子は彼について詳しく話してくれた。



どのように文通をする仲までに至ったか……
彼が忘れられない理由……