先生のヒミツ (21/25)
私は両手で目を覆った。
痛くはない。
でも何も見えない。
白い光の残像が網膜の上で明滅している。
暗くて判別しにくかったが、目の前にいた男の子がつまみ上げていたのは、水道の蛇口に繋がったホースに見えた。
体育館の隣にある駐車場に水を撒くときに使われるものだ。
視界は回復しない。
自分がなぜこんな状況にいるのか全く理解できなかった。
さっきの男の子はどこに……
……一体、誰なの。
「これで逃げられないね」
不意に足元から、そう聞こえた。
男にしては高めの声。
中学生か高校生か……
私は両目を覆っていた手を離した。
視界は白いモヤが掛かったように何も見えない。
恐怖で無意識に涙が出る。
何が起きてるの……
一歩、後退しようとした。
「きゃっ……!」
私の両足は何かで固定されていた。
そのせいで尻餅をつく。
硬い地面に横になり身悶えした。
反射的に、痛みを感じる部分に両手が動く。
「痛っ……」
手のひらで腰の辺りを強く押さえた。
「はい、今度は両手」
そう聞こえたと同時に、私の両手が縛られた。
腰をさすっていた両手の自由は無くなった。
ものの数秒で、私はイモムシとなってしまった。
混乱状態の私に、謎の男の子は優しく話掛けてきた。
「Yesなら頷く。Noなら首を振る」