先生のヒミツ (20/25)
刑事たちが帰ってから、今週のテストの採点と来週の授業の準備を済ませた。
あまり作業は捗らなかったので、職員室を出たのは午後7時前だった。
時折、肌寒い風が廊下を流れる。
窓から見える西の空は既に群青色をしていた。
2階から階段を降り、玄関ホールふで靴を履き替え外に出た。
今日は土曜日。
日中に部活動をしていた生徒たちは6時に完全下校となっている。
私は誰もいない静かな校舎に、自分の靴音を響かせた。
……?
私以外の足音が聞こえる……
私は立ち止まった。
どこからか人が走ってくる音がした。
目の前の体育館の陰から誰かが走ってきた。
薄暗がりで見えにくいが、ラフな格好をした男の子だ。
ジーンズに半袖Tシャツ。
野球帽のようなものをかぶっている。
「すみません!助けてください!」
その男の子は高めの声で言った。
何かあったのだろうか。
「こっちです!来てください!早く!」
彼は再び体育館の方へ戻っていく。
「まって!」
私は必死に追いかけた。
体育館の角を曲がる。
そこには水道の蛇口がいくつかある。
水道の前で彼は待っていた。
私は肩で呼吸をしながら立ち止まる。
「あの……これ知ってますか?」
彼が呟いた。
そして何かをつまみ上げた。
つまみ上げられたものに視線を移した。
次の瞬間。
ーーーーーーピカッ
突然、白い閃光が瞬いた。
そして、私の視界はなくなった。