先生のヒミツ (19/25)

「なるほどな……金本殺害の動機が見つからない事にも符合する」



「この推理、どうでしょうか」



「青野、でかした。やはり我々のすべき事は奈子の捜索だ。そして犯人と接触するときが勝負だ」

大貫刑事は立ち上がった。




「こちらのメモ、お借りしますね」

そう言って青野さんが私の用意したメモを手早くまとめた。

メモには地村君の高卒後の就職先。
そして、なっちゃんの弟が通っていた小学校が記してある。

上司に続いて青野さんも立ち上がった。



大貫刑事は応接室の扉の前でこちらを振り返った。
その横に青野さんが並ぶ。



「佐倉先生。今、我々が話していた事はどうか内密に」



そう言われても、会話の内容のほとんどが何の話なのか把握仕切れなかったが「はい」と返事をする。



「私が事件の情報を漏らしても何のメリットもありません。誰にも言わない事は約束します。ただ……」



「ただ……?」



「奈子さんの……なっちゃんの居場所が判明したら連絡をください」


生きているのなら、彼女に会いたい。



「わかりました、必ず」



失礼します、と刑事2人は応接室を出て行った。

応接室の窓から、去っていく彼らの後ろ姿を見送る。




ごめんなさい、刑事さん。

心の中で謝罪した。
話せていない事が1つあった。



それを話したところで何かが変わるわけではない。
だから話さなかった。



あの日、私が彼女に渡した『お守り』の話……