先生のヒミツ (18/25)

「大貫さん……」

今まで黙っていた青野というもう一人の若い刑事が口を開いた。



「どうした……」

大貫刑事は相棒の顔も見ず返事をした。



「偶然ではない、つまり必然ということですよね」


「……?……そうだ」


「犯人は白神奈子の行方を警察に捜索させるために事件を起こしたのではないでしょうか」



私がいることも忘れて2人の刑事は討論を始めた。



「……何が言いたい」



「金本武雄の変死事件を調べるうち、我々は白神奈子を探している人物が犯人と同一であると突き止めました」



「そうだな」




「我々が事件を解く鍵は、白神奈子の居場所です。それを突き止めることにより、犯人と接触が計れます」



「……ああ」

平静を装う大貫刑事の手は震えていた。



「ここで白神奈子の行方を知るという点で、犯人と我々の目的が一致します。つまり初めから犯人の狙いは、我々が今こうして白神奈子を捜索していること……だったのではないでしょうか」



「全て犯人の筋書き通りというわけか……そうすると犯人はその計画で鉄壁の前提を築き上げている……絶対に捕まらないという大前提を」



「はい、現に我々は犯人の尻尾も掴めていません。金本が殺された件でも、殺意は無かったのではないかという線が有力です」



「何らかの事件を起こすだけでよかったが、勢い余って1人は殺してしまった……と。俺たちは操られていた……そう言いたいのか」

大貫刑事のこめかみが揺れる。

冷静な若手の刑事はなおも続けた。



「逆にこうも言えます。犯人は生徒同士の人間関係を上手く利用しています。つまり、その人間関係を知ることのできる距離に……犯人はいる、と」