先生のヒミツ (8/25)
「こっちが地村」
なっちゃんはまず背の低い方の男の子を紹介してくれました。
目元が隠れるほどの茶髪が印象的な生徒で、
「よっす」
地村と紹介された彼はアゴを突き出すようにして軽い挨拶をしました。
そしてもうひとり。
なっちゃんがもう1人の男子生徒を紹介しようと、彼の肩に手を置きました。
その2人の姿を見て、私はピンときました。
「こっちは楢崎」
「うっす」
紹介された楢崎(ナラサキ)君も私に軽い挨拶をしてくれました。
その直後、楢崎君となっちゃんが顔を見合わせてアイコンタクトを取ったのを私は見逃しませんでした。
「なっちゃん、もしかして……」
私がそこまで言うと、普段では見せないような笑顔で彼女は頷きました。
「やよっち、そのもしかしてだよ」
そうです、楢崎君こそが奈子さんの彼氏でした。
楢崎 大地君です。
彼は整った顔立ちで、髪の先だけ金に染まっていました。
「やよっち、悪いんだけど地村と楢崎にも勉強教えてほしーんだけど……」
なっちゃんは珍しく遠慮がちにそう言いました。
おそらくは照れ隠しだったんでしょう。
私は彼女の申し出を快諾して、3人の不良生徒を指導する、夏休みの特別講習が始まりました。