先生のヒミツ (4/25)

「彼氏ができた」

奈子さんは嬉しそうに私に報告してくれました。
といっても嬉しさを顔いっぱいに表現して、というわけではないです。


報告をする時の彼女の微妙な声のトーンや、いつもは堂々としている目が泳いでいたり……


それは奈子さんが髪を黒くしてから数週間後の出来事でした。


「やよっちみたいに髪黒くしたのが良かったのかも」


彼女はそう言いました。
「手のかかりそうな子」という最初のイメージは無くなりつつありました。


それからさらに数日後、奈子さんは髪を短く切ってきました。
傷んだ毛先をリセットするためだそうです。


「やよっちも一緒にショートにしよーよ」

当時、髪を伸ばしていた私はその申し出を嬉しく思いました。


親友が出来たような、妹が出来たような、そんな初々しい嬉しさでした。



私と奈子さんの関係の変化は、他人から見ても明らかだったようで……


湿気で教室が蒸し暑くなる6月。
私は生徒指導の浜田先生に呼び出されました。



その時にはもう、歯車は狂い始めていたのかもしれません。

「白神奈子の指導を君に一任する」

浜田先生は私にそう告げました。



私たちは、教師が特定の生徒と親密になってはいけないという決まりを破ったんです。