刑事の決意 (13/18)
ーーーーーーなあ、奈子は元気か?」
大貫は電話越しに、問いかけた。
「……今さら父親づら?」
彼の問いに、元妻の夏江は冷たく答えた。
「父親が娘の心配をして何が悪い」
「もうあなたは父親じゃないわよ。離婚したでしょ。早く捜査とやらに戻ったら?」
「……奈子がどうしてるかだけでも教えてくれないか」
「そんな筋合いある?」
夏江の口調に、譲る気持ちは全くない。
「……」
大貫は何も答えられなかった。
「……奈子は元気よ。奈、子、は、ね」
彼女は嫌味のこもった言い方をした。
大貫は元妻の棘のある言い方は相手にしなかった。
「そうか……今は中学2年、だったよな?」
「あなた……奈子のことばっかりじゃない。いくら女の子が欲しかったからって、ヨシキがかわいそうよ」
「あいつは俺のことなんか覚えてないだろ」
間違いなくヨシキは父親のことを覚えているだろう。
「……やっぱり父親失格。あ、そうだ。私たち引越しするから。今後連絡は取れなくなると思うけど、探さないでちょうだいね」
「えっ……ま、待て夏江!」
大貫は慌てて呼び止めたが、次に聞こえたのはツーツーという音だけだった。
ーーーーーーおおぬきさん……
ーーーーーー大貫さん!着きましたよ!
「起きてください!」
運転席から青野が、大貫の肩を揺すっていた。
「あ……ああ、すまん」
少し、まどろんでいたみたいだ。
嫌な目覚めだ。
大貫と青野は白神奈子の通っていた中学校で聞き込みをした。
その帰り、運転を青野に任せた大貫は助手席で眠ってしまっていたのだ。
中学校での聞き込みは収穫アリだった。
その内容は大貫にとって耐え難い情報だった。