女の友情 (18/26)
「塾に行く途中だったって、甘橋さん言ってた」
みのりは答えた。
甘橋さん、という時の彼女の口調に嫉妬や嫌味の響きはなかった。
助けてもらったことで、甘橋さんを敵対視することをやめたのだろうか。
「塾?」
「なんの塾かは聞いてないんだけどね。駅前にあるらしいよ」
確かにあの暗い道は駅への近道でもある。
実際、みのりの自宅は駅近だ。
「ふーん。そうなんだ。で、みのりさあ、襲われたことは清瀬さんには話したの?」
「うん。黙っとこうと思ったんだけど、この傷はどうしたのって聞かれたら誤魔化せる自信なくって」
そういって彼女はスカートの裾を少しまくりあげた。
膝小僧にスリ傷があった。
自転車で転けたと言えば誤魔化せるが、後ろめたい気持ちが生じるのは間違いない。
素直に話した判断は正しかっただろう。
「そっか、そうだよね」
「あっ、それでね琴音」
みのりは突然申し訳ない顔をした。
顔の前で両手を合わせている。
「甘橋さんが助けてくれたって話を彼にしたら、是非お礼がしたいって……」
「うん、それで?」
彼女がなぜ申し訳ない顔をしているのかがわからなかった。
私の気持ちに構わず、みのりは片目をつむり、謝罪するような姿勢で言葉を続けた。
「今度のダブルデート、琴音じゃなくて甘橋さん連れてくことになっちゃった」