胎児のゆくえ (6/10)

私は彼女の話を整理して、ゆっくり頷いた。


それはつまり……


今、万里子が話した内容を統括することは、今まで受け入れていた現実を根底から覆すことになる。



『人を翻弄するのが上手いよ、あいつは……

そう言っていた大貫刑事が脳裏に蘇る。

あれ?じゃあ屋上で黒焦げになってたのは誰……
警察の人たちはその正体を突き止めているんだろうな。

大貫刑事の様子を思い出してそう思う。

気になるけれど、残念ながら私たちに知る権利も、方法もない。



「え?なに?」と隣ではみのりが不審な挙動で慌てている。





でもすっきりした。
そういう事だったんだ……

ヨシキ君が復讐したかった人間の中に、私も入っていたという事。


私から友人を奪うという復讐。

かつてヨシキ君は私に奪われた、万里子というかけがえのない友人を。

もちろん奪うつもりなんて微塵もなかった。
それでもヨシキ君からすれば、奪われたも同然だ。

私はヨシキ君と直接的な関わりはなかった。
それでも私と万里子が友達になった瞬間から、『友人』という間接的な関係は生まれていたのだ。



生まれる。
その言葉が頭に浮かんだ次に、ふいに『胎児』という言葉が連想された。