胎児のゆくえ (5/10)
予想外の質問だった。
なぜそんな事を……?
「漢字じゃなくて、ひらがな表記なんじゃないかな」
私はそう答えて、みのりの顔を見たが、彼女も同じ意見らしい。
「ヨっくんはね、自分の名前が好きじゃないってよく話してた。だから手紙とかで名前を書く時はいつもカタカナだったの」
万里子が遠い目をして話し始めた。
「なんでかっていうと、漢字で書くと読み方によっては女の子と間違えられるから……って」
「ど、どうしたの万里子。何の話?」
私は状況を飲み込めていないみのりを横目に、万里子を心配した。
が、彼女は話を続ける。
「ねえ琴音。私、ヨっくんの写真を見せた事ないでしょ?」
と万里子は尚も脈絡のわからないことを問いかけてくる。
たしかに私は、ヨっくんがどんな子なのか教えてくれと万里子に言ったことがある。
しかし、写真も見せてもらったことがなかった。
「小学生の頃のヨっくんは……名前だけじゃなくて見た目でも勘違いされてたくらい……いじめられる原因にもなるわけだよ……何が言いたいかわかる?」
「ねえ万里子……まさか……まさかそんな事……」