胎児のゆくえ (4/10)
「なに、どうしたの?」
「その甘橋さんって、どんな子なの?凄く美人だって話だけど」
万里子の目には珍しく好奇心が宿っている。
すると、みのりがニヤニヤしながら素早くスマホを取り出す。
「待って、今見せてあげる……ほら!これが、甘橋ゆき」
みのりが差し出したスマホを私と万里子は覗き込んだ。
それはプリクラだった。
みのりと甘橋さんが2人で写っている。
2人とも澄まし顔だ。
甘橋さんは美人だった。
恐ろしいほどに美形だ。
「みのり、もしかしてこれダブルデート行った時に撮った?」
私は彼女を睨みながら問う。
「そうそう」
と悪びれもなく肯定する。
そんなことより万里子の反応が気になるらしい。
「万里子、どうしたの?」
彼女は瞬きせずにスマホを見つめたままだった。
少し首を捻っている。
「マリリンはあたしの方が美人だったからコメントに困ってるのよ」
と本気なのか冗談なのかよくわからないことをみのりが言った。
しかし、万里子は無反応だった。
瞬きを何度かしたあと万里子は口を開いた。
「甘橋さんは『ゆき』って名前なんだよね?漢字でどう書くの?」