胎児のゆくえ (3/10)

「混ぜて!じゃないでしょ、みのり……

私は呆れ半分、苦笑して言った。



「いいじゃん別に!で、あなたは?」

みのりに興味の方向を向けられた万里子は当然ながら戸惑っていた。

私が仲介に入る。


「私の小学校の頃の友達で笹峰万里子」

と、みのりに紹介し、

「これが、佐々木みのり」

と、万里子に紹介した。


「ちょっと琴音?これが、って何なの?そんな紹介の仕方ある?」

怒っているのかと勘違いする程の勢いでみのりが突っ掛かってくる。
前までの私なら、ムッとしていただろう。

でも今は彼女の扱い方が少しわかる。


「みのりの事はよく話してるのよ。高校の仲の良い友達だってね」

私はそういう風に答えを返した。
万里子も相槌を打つ。


「ふうん、まあそれならいいけど。あたしのこと仲の良い友達と思ってるなら、もっと丁寧に紹介してよね」

そう言ってみのりはツンケンする。



「よく言うよ。私のこと放ったらかしにして甘橋さんとダブルデート行ったくせに」

と呟いてみる。



「え~!琴音そんな事で怒ってたの?」

相変わらず無神経にも程がある発言。
でも、みのりに悪意はないのだ。


「そんな事って何よ!」

言い返しながらも、彼女との会話の楽しみ方がわかってきた。


「男なんていくらでもいるのに、そうよねえ?マリリン」

マリリンと呼ばれた万里子は苦笑しながら「まあ、そうね」と曖昧に同意する。

『男なんていくらでもいるのに』という言葉は、今の万里子にとっては禁句だ。


私が不安に思っていた事。
それは、落ち込んでいる万里子に、みのりが傷口に塩を塗るような発言をしないか、という事だった。



不安は的中したわけで……

さすがの万里子も傷付いたのでは……と心配になり彼女の顔色を伺った。


けれど、特に傷付いた風でもなく、明るく振舞っている風でもない。
それどころか、みのりを見ながらクスクス笑っている。


「なに笑ってんのよ!」

みのりが突っかかる。



「別に。みのりちゃん面白いなと思って」


無神経な慰めに、逆に吹っ切れさせる力があったのかもしれない。



「あっ、そういえば気になってたんだけど……

と万里子が私とみのりを交互に見ながら言う。