独白の声 (13/14)
降り止まない雨。
屋上にいる私たちを容赦無く濡らした。
私は顔に滴る水滴を拭い、大貫刑事の元へ歩み寄った。
刑事の隣に腰を下ろした。
その腕の中には美しい彼女が眠っているように目を閉じている。
「し、死んじゃったんですか……?」
「いや、生きてるよ」
そう答える大貫刑事の言葉は安堵の感情がこもっていた。
私は甘橋さんの額を撫でるようにして、顔に貼り付いていた黒くて綺麗な髪を整えた。
倒れた時に付着したのだろう、彼女の頬は砂利で汚れていた。
私は雨が降っているのをいい事に、それを指先で洗い流してあげた。
なぜこんなに綺麗な子が……
私は何故か悲しく、悔しい気持ちになった。
どうする事も出来なかった無力感もあった。
あれ……?
私は彼女の顔に付いた砂利を払っている途中、こびり付いて取り除けない黒い点があることに気がついた。
しかし、すぐにそれが砂利ではなく、ホクロであったことを知る。
……甘橋さん、こんなところにホクロあったんだ。
普段は化粧とかで目立たなくしていたのかな……
そもそも、私は甘橋さんのことを何も知らない。
いや、知らないというより……
「ごめんね、甘橋さん……私、あなたのこと全然知ろうとしてなかった……」
もっと彼女のことを知ろうとしていたなら、事件も防げたかもしれない。
甘橋さんが最後に残した言葉の『胎児』 というフレーズが妙に耳に残っていた。