独白の声 (12/14)
「……甘橋さんっ、どうしてなの」
私はなぜか溢れてくる涙を堪えながら訴えた。
どうして甘橋さんがこんなことを……
「その答えは簡単よ。そこにいる無責任な人が一時の快楽を求めた結果がこれなの」
甘橋さんの視線は楢崎大地に向けられている。
当の楢崎大地はというと、俯き加減で呆然と立ち尽くしているだけだった。
「君が白神ヨシキとどう関係があるのかはわからない。でも君がやっていることは無茶苦茶だ」
篠崎さんが反論した。
それを受けた甘橋さんはゆっくりと首を左右に振る。
「復讐心も大きくなるんです。白神奈子さんの子供が大きく成長するのと同じように。4年前の過ちがこんなにも大きくなったということです」
「……狂ってるよ。結局お前は何者なんだ」
篠崎さんはそう問いかけた。
しかし、返ってきたのは抽象的なものだった。
「4年前にこの世に生を受けた胎児、ですね」
そして甘橋さんは満足げに頷いた。
「後は私が死ねば復讐は終わりですね……」
そう言うと彼女は地面に落ちていた手のひらサイズの何かを拾い上げた。
それはバチバチと音を立てた。
「スタンガンだっ!」
大貫刑事が叫ぶと同時に甘橋さんの手を抑えに掛った。
「やめて!甘橋さんっ!」
私は叫ぶことしかできなかった。
大貫刑事が彼女の手を掴んだ。
しかし、時既に遅し。
甘橋さんは自分の首にスタンガンを当てるとそのスイッチを押していた。
まるで操り人形の糸が切れたように、彼女の身体はその場に崩れ落ちた。