独白の声 (10/14)
蒸し暑くなった校内。
階段を上りきった。
屋上への扉は半開きになっていた。
額から汗が流れ落ちた。
躊躇なく、篠崎さんが扉を開けて屋上へ出た。
私と楢崎大地さんも後に続く。
屋上に出た途端、異臭が鼻をついた。
屋上も燃えたらしく、地面が黒い。
熱された地面に雨が落ち、水蒸気に変わる。
水蒸気が立ち込めていて、学校の屋上であることを忘れさせられた。
後から駆けつけた私たちに気付いた大貫刑事がこちらを振り返る。
刑事は呆れた顔で「馬鹿どもが……」と呟く。
そしてすぐに視線を前に戻した。
大貫刑事の視線の先に目を向ける。
私の勘は間違っていなかった。
甘橋さんが、そこにいた。
雨に濡れ、服が透けている。
いつもは綺麗な髪が、べったりと顔に貼り付いている。
俯いていて、表情はよくわからない。
そして甘橋さんの足元にある、黒い塊。
その塊からは、灰色の煙が立ち昇っている。
「……大貫さん、まさかあれって……」
篠崎さんが声を震わせながら言う。
「黙ってろ」
刑事は甘橋さんから目を離さずに言葉を吐き捨てた。
私は黒い塊に目を凝らす。
その正体が何かを悟り、息を飲んだ。
それは焼け焦げた人間に相違なかった。