独白の声 (8/14)

何度も躓きながら、人の上に倒れながら階段を下りた。
他の学年と混ざり合い、さらに人口密度は増す。





しかし、一階まで降りていくと意外とスムーズに外に出ることが出来た。

全校生徒がグラウンドに駆け出す。


放送でヨシキ君が言っていた事と現実に差がある事に気がついた。

校舎の周りにある排水溝にも火が回って外に出ることは困難だと思っていた。

でも今は、雨の量は少なく、排水溝から雨水があふれているということはなかった。



燃え上がる校舎から遠い所を目指して私たちは走った。

グランドの土が跳ね上がり顔に当たる。



何かを置き忘れてきたような気がして、校舎を振り返った。



炎と雨で水蒸気が昇る屋上。


……あれ?
屋上に誰かいる……



「あっ……!」

よそ見をしていたせいで、躓いて転んだ。
地面に突いた手を誰かに踏まれた。



「琴音!」

少し先で走っていたみのりがこちらを振り返って呼んでいた。
日村君もいた。

他の生徒に逆行しながら彼女たちは私の方へやってきた。



「大丈夫?」

みのりは血の滲んだ私の手を取る。

私はそれに答えているどころではなかった。




なぜ私がこんなに冷静なのか、自分自身を理解した。



屋上に見えた人影。


私の頭にずっと引っかかっていた存在。






……甘橋さん。





「ちょっと琴音!どこ行くのっ?」


私はみのりの手を振り払った。
そして、校舎から逃げてくる流れに逆らって走った。