独白の声 (7/14)
「琴音!逃げよ!」
みのりが呆然としていた私の腕を掴んで引っ張る。
ヨシキ君、なんてことを……
廊下に出て、まず目に飛び込んできた光景に息を飲んだ。
窓の外に炎が見えた。
ヨシキ君が放送で言っていた通り、校舎の壁伝いにある排水パイプから火の手が上がっていた。
雨のせいで湿っていた空気が温められて、さらに湿度を増していた。
一斉に校舎の外へ逃げていく生徒の波に飲まれるように、私はみのりに手を引かれながら流された。
「痛っ……」
後ろから知らない生徒が私の肩を掴み振り払った。
私が倒れると、ドミノのように他の人も倒れる。
人が倒れることによって出来上がった空間を、まるで道のように踏み越えていく生徒たち。
______誰かたすけてっ!
______早く外に出ろ!
______押すなよっ!
炎が立ち昇る窓の外。
誰もが怒声や悲鳴を上げていた。
「小原さん」
顔を上げると日村君が手を差し出していた。
その手を取り、立ち上がる。
「ありがとう、日村君」
「立てる?みのり」
「うん、ごめん……ありがとう琴音」
私はみのりと手を取り合って立ち上がる。
すぐに集団の流れに乗る。
他の生徒たちは皆、我先にと押し合い、助け合いの精神などなかった……
これが今の私たち若者の本当の姿なのかと、絶望の淵に立たされたような気分になった。