独白の声 (6/14)

『以上が僕が復讐をする経緯です。それでは全校生徒の皆さん、恨むなら楢崎大地君を恨んでください』



いよいよパニックが起こり始めた。

教室から出て行く生徒。

耳を塞いでいる生徒。

なぜか好奇の目をしている生徒など……




しかし、次に放送された言葉にさらに騒ぎは大きくなる。




『今日は雨ですね。
学校の屋上に降った雨はどこに行くか想像できますか?』



意味不明な話に誰もが身体を硬直させる。

いつの間にか、私の横にみのりが寄り添っていた。
構っている余裕はなかった。

日村くんの方を見る。
騒ぎの中でさらに存在感を薄くして、まだ席に座っている。




『降った雨は、屋上の隅にいくつか設置されている排水溝を抜けて校舎の壁伝いに巡らされているパイプを通過します』




巨大な不安の波が押し寄せる。




『そして校舎の周囲にある溝を雨水で満たして下水へ流れます。
あいにく、雨の量が多いせいか溝から雨水が溢れていますね。
では全校生徒の皆さん……』



一体何を企んでいるの……?
何が起きるの……?




『この雨の通り道に、カネンセイの液体が流れたら……
どうなるかわかりますね』






カネンセイ。

その耳慣れしない単語が「可燃性」に変換されたと同時に、生きている心地を失った。


スピーカーから流れるその語り口調は、学校全体をパニックに陥れるにはあまりにも明るすぎた。




『今、楢崎大地くんに恨み言を吐いているあなた。
皆さん、自分の心に問いかけてください。

無責任な言葉、軽はずみな行動……
心当たりはありませんか?

あなたの言動が、あなたの知らないところで、あなたの知らない人を傷つけている事があるんですよ。

楢崎大地、自分の無責任な行為を後悔するがいい______』



ブツっと放送が切れた。

その直後、






ジリリリリリリリ……






火災報知器のベルが鳴り響いた。

ベルの音が周囲の悲鳴と混ざり、耳鳴りのように頭痛を誘った。




廊下は教室から飛び出した生徒で一瞬にして溢れかえった。