独白の声 (4/14)

『全校生徒の皆さん、おはようございます』

スピーカーから聞こえてきたのは、中性的な男の子の声だった。



教室がざわめいた。

______何この放送。

______先生の声じゃないよね?

______なんか怖い……


みんな口々に囁きあっている。
しかし、またスピーカーに視線を向け、すぐに静まり返った。




『今日は予報通りの雨ですね。事件が起きるにはうってつけの天候です。 今から全校生徒の皆さんには、僕のフクシュウに巻き込まれてもらいます』


意味不明な放送に、誰もが戦慄した。

休憩時間のように、校舎内が騒がしくなった。



フクシュウ。

頭の中でその言葉が「復讐」という漢字に変換される。

首筋の後ろがゾワゾワするような不安感がこみ上げた。



『なぜ皆さんを巻き込むか、という理由を今からお話しします。先生方が放送室の扉を破るまでに語り終わるでしょう』



今にも教室から出て行こうとしていた先生が動きを止め、不気味そうにスピーカーを見上げる。

そしてすぐに「自習」と言い放って先生は教室を出て行った。



タイミングを見計らったように、スピーカーから放送が続く。




『僕の人生はある人物の無責任な行動のせいで台無しになりました。その経緯をお話しします。時を遡ること4年前。僕には姉がいます』


私はそこまで話を聞いて、確信した。


今、放送しているのは……
……ヨシキくんだ。



一体何を企んでいるんだろう。
放送に耳を傾けた。




『結論から言うと、姉は中学2年の時に妊娠しました』



その一言がスピーカーから流れた瞬間に、周りから悲鳴のような歓声のような声が上がった。




『それからです。僕の人生が、音を立てて崩れ始めたのは……姉はお腹に宿った子どもを産むと主張しました。そして、父親である彼氏と別れるという条件の元、姉は母親になる道を選びました』




語られる内容が深刻になってきた。
教室はしんと静まり返っている。


生々しい話に口元を覆い、ショックを隠しきれない女子生徒や、好奇の色を露わにしている生徒もいた。