この筋書きの結末 (27/31)

「どうも。……刑事さんこんなところで何してたんですか?」

小原琴音は不思議そうな目で大貫を見上げた。




「探してたんだよ……」

甘橋ゆきの名前を出すか迷った。
この子は事件のことを他の生徒よりは知っている。



「探してた……誰をですか?」

彼女の目に好奇心が浮かんだのがわかった。
気になるのが普通だ……



「……甘橋さんだよ」

大貫は意を決して今追っている人間を明かした。
なぜ追っているか詳しい事は話さなかったが、事件に関わっているかもしれないという旨は伝えた。


「でもこれは誰にも言わないでほしい」

そうつけ加えた。



小原は何かを察した顔になり、神妙な顔で大きく頷いた。
そしてショートカットの髪を耳にかけ口を開く。


「刑事さん。甘橋さんは、今日は学校が終わった後すぐに下校しましたよ」




「そうなのか、何か君の知っている事を、教えてくれないか」

大貫は情報を得られるかもしれないという期待と、それを裏切られる不安で、声が上ずった。



彼女は頷く。

「甘橋さんはいつもなら、みのりと少し話してから帰るんです。佐々木みのり、覚えてますか? 」



「ああ、もちろんだ。覚えているよ」



「まあ話すという程じゃないんですけど、手短に挨拶するというか……みのりが一方的に話すんですけど……」



「それで、今日はその絡みはなかったという事なんだね?」



「そうなんです。ホームルームが終わると甘橋さんは静かに教室から出て行きました。みのりは驚いていたけど部活に行きました」



そういえば小原さんも部活をしていたはず……と気に掛かったが、今は関係なさそうだ。


「それで、甘橋は……甘橋さんは?」

大貫は話を促す。



「私、後をつけたんです。甘橋さんの。そうしたら校門を出て少し行ったところに車が停まっていて、それに乗っちゃったんです」



「く、車だって?待ち合わせでもしてたのか……?」

ヨシキが迎えに来たのか……?



「はい、でも待ち合わせとか迎えに来てもらったっていう風ではなかったです。こう、なんて言うか、車の窓が開いて呼び止められていたように見えました。運転していたのは男の人だと思います」

説明が難しいのか小原は眉間にしわを寄せた。
何となく言いたい事は伝わってきた。



「ちなみにそれはどんな車だった?高級そうだったとか、何か覚えてないかい?」



頬に手を当て彼女は考える仕草をした。

「うーん、あんまり車とか興味ないからなあ……距離も遠かったし……」



大貫はこれ以上情報は聞き出せないかもしれないと、諦めかけていた。
甘橋ゆきが車で下校した事を青野にも教えてやらねばと思っていた。



「あっ、」

小原が声を上げた。



「なんだ、何か思い出したかい?」






彼女はスッキリした顔で答えた。


「その車、軽自動車でしたよ!」