この筋書きの結末 (24/31)

「つまり犯人は、金本のストーカー行為を知っていて、且つ、盗撮している事は知らない人物……です」

青野は自信無さげに言った。




「何が言いたいんだ」

大貫は彼の考えている事がよくわからなかった。
結論を濁しているように思える。



「……想像してください。帰宅途中の甘橋ゆき。彼女をストーキングする金本。そして、それを目撃していた犯人」



青野が言う順番に人物を頭の中で想像した。

「……続けてくれ」



「この場合、第三者である犯人は金本が盗撮しているところも目撃したはずです……目撃している可能性はかなり高いはずです」

青野の口調は控え目だったが、断言的なものを含んでいる。


たしかにその可能性は高い……
犯人が第三者であれば、金本が盗撮しているところも目撃しているはずだ。

青野が言わんとしている事が、ぼんやりと分かってきた。



このアルバムに貼られている写真は、犯人にとってマイナスの要素となるのは確かだ。

もしも犯人が、金本の盗撮行為を把握していれば、その写真を処分しようとしたはずだ。

しかし、アルバムは昨日発見された。
金本家に空き巣が入ったという話も聞いていない。




つまり犯人は、金本がストーカーをしていたことは知っているが、盗撮していたことは知らなかった。


犯人が第三者という線は消してもいいだろう……
第三者でないとなると、当事者、つまり犯人は……





他ならぬ被害者本人ではないか。

被害者であれば、盗撮には気付いていなかった、という可能性は皆無ではない。




「青野、お前の言いたいことがわかった。つまりヨシキの共犯者は」




大貫と青野は同時にアルバムに目を落とした。





ヨシキと彼女に、どういう繋がりがあるのだろう。





ヨシキが構想した筋書きの結末は、書き換えられるかもしれない。





「最後の足掻きだ」

大貫は呟いた。
車のエンジンを掛ける。



「いいんですか……」

青野が不安げに言う。

捜査が打ち切られたにも関わらず、事件に首を突っ込んでいいものか、気にしていたのだろう。



「俺が責任を取る。行くぞ」

大貫は車を発進させた。