この筋書きの結末 (22/31)
まさかここで甘橋ゆきが絡んでくるとは……
このアルバムは犯人にとっても想定外のはずだ。
大貫は青野にアイコンタクトを送った。
“これは何かあるな。”
“ありますね。”
2人は頷き合い、金本夫人に向き直る。
「このアルバムはお預かりさせて頂きます」
それを聞いて夫人は不安げに首を縦に振った。
「大丈夫です、悪いようにはしません」
大貫と青野は金本家を後にした。
車に乗り込む。
「……青野、お前の推理は?」
「ま、待って下さい。正直、混乱してます」
お互いが黙った。
頭の中で事件を整理する。
この一連の事件の犯人は、白神ヨシキ。
そしてもう1人、濱岸アユと名乗る共犯者。
濱岸アユが学校内における金本武雄殺害の実行犯であると思われる。
学級内の人間関係を見事に利用し、ヨシキが目的とする奈子の捜索に警察を誘導した。
犯人は『佐々木みのり』という生徒の名前を使い、金本を放課後に呼び出した。
実際に金本は犯人の思惑通り、現場におびき出されている。
問題となるのはここだ。
このアルバムが発見されたことにより、話が多少変わってくる。
金本を誘い出すのに最適なのは、甘橋ゆきを名乗る事のはず……
犯人は金本のストーカー行為を把握していなかったのか……いや。
「……そうか」
大貫は思わず声を漏らした。
青野が反応する。
「何かわかりましたか……?」
「金本を現場に誘い出す為に犯人は手紙を使った、よな?」
大貫はもう一度整理しながら言った。
「そうです、その手紙の差し出し人は、佐々木みのり」
青野も確認しながら相槌を打つ。
「そこだ。それで本当に金本を誘い出せたと思うか?金本は甘橋ゆきにこれほど熱を上げていたんだぞ」
そう言ってアルバムを叩く。
「犯人は金本のストーカー行為を把握していなかったのでは?」
「それも考えられる、が。金本は本当に佐々木みのりの名前に釣られたのか?犯人は金本を、確実に、現場に誘い出す必要があった。金本が来なかった、では話にならない。金本武雄という生徒を選んだ理由があるはずだ」
「金本を選んだ理由……つまり、犯人は金本が食らいつくエサを知っていた……そう考えれば、計画性の高い犯人像に結びつきます。あれ……じゃあ、」
青野は眉間にしわを寄せ、大貫を見た。
なぜ『佐々木みのり』に目を付けてしまったか。
それは金本を誘い出す為に使用された手紙のせいだ。
それは我々の思い込みだったのだ。
「そう、我々はまんまと騙されていた。あの手紙は、犯人が犯行後に金本のカバンの中に入れた……罠だったんだよ」