この筋書きの結末 (18/31)
大貫と青野は一軒の家の前にいた。
住宅街の端にある小ぢんまりとした木造の家だ。
時刻は午後3時半を回っている。
約束の時間を少し過ぎていた。
表札が『金本』であることを再度確認し、インターホンを押した。
はい、と応答があった。
大貫が要件を告げると、しばらくして中年の女性が出迎えてくれた。
金本武雄の母親だ。
「わざわざお越し下さって、ありがとうございます」
か細い声で金本夫人は言った。
簡単に挨拶を交わし、本題に入った。
「武雄君を殺害したと思われる犯人ですが……捕まえることが出来ませんでした。本日をもって捜査が打ち切られました」
精一杯の誠意を込めて大貫は頭を下げた。
隣で青野もそれに倣う。
「そんな……」
彼女はそう言ったきり、何も口にしなかった。
どんな罵倒をされるのだろうと内心憂鬱な気分になっていた。
「……頭を上げてください」
金本夫人は予想していたよりも穏やかな口調でそう言った。
大貫たちはゆっくりと頭を上げる。
悲しげな笑みを浮かべ、彼女は続けた。
「あの、良かったら拝んでやって下さいな」
その申し入れを断ることなど言語道断。
大貫と青野は家の中に招かれた。
そして12畳ほどの和室に案内された。
和室にある仏壇の横に、金本武雄の遺影写真が祀られていた。
線香から1本の煙が立ち上っている。
2人は手を合わせ、拝んだ。
心の中で、犯人逮捕が叶わなかったことを詫びた。
「これでよかったんですよ……」
後ろで金本夫人が呟いた。
「……といいますと」
大貫は遺影写真に背中を向けないように、夫人の方に体を向けた。