この筋書きの結末 (16/31)

「ねえパパ……

奈子が口を開いた。


「ヨシキの目的は何だったの?美月なの?」



「それについては分からない。が、推理でいいなら話そう。ああ、すまない、どうぞ座ってくれ」

大貫は奈子と夏江に席を勧めた。




「確かにヨシキは美月を狙っていた」

大貫は推理を話し始めた。

「もしヨシキの犯罪が成功していたら美月は攫われていただろう。いわゆる誘拐だ」


中村に車を用意させられた事からも、あの場所から逃走するつもりだったのは明白だ。




「誘拐?何のために?」

奈子が質問を挟む。



「復讐、だろうな」



……復讐?あたし達に?」


「奈子たちに……それも不正解ではないな。ヨシキの境遇を考えると誰を1番恨んでいるかがわかる」

大貫は娘の目を見た。
彼女はハッとしたように口を開いた。



「大地くん……



「そう、楢崎大地だ。彼が無責任なことをしたにも関わらず、真っ当な青春を送っていることをヨシキは知ったんだ。もちろんヨシキが平凡な人生すら歩めていないという前提だが」



「でもパパ。美月を誘拐しようとした事と、どう繋がるの?」

奈子が当然の疑問を口にする。




「誘拐犯は大抵、誘拐した人質を盾に、取引を仕掛けてくる。 子どもの命と引き換えに、何かを要求してくるんだ。例えば身代金とかだ」

奈子と夏江が話に着いて来ているかを確認した。
2人とも頷いた。


「ヨシキは大地くんに何かを要求する予定だったってこと?」

と奈子。



「そう。この子の父親であることを認めろ……そんな要求だったらどうだ。しかも公の場で、例えば全校生徒の前で、とか」



奈子は、そんなまさか、と今にも言いだしそうだった。

大貫は続ける。



「そして人質の美月が殺されたらどうだ……楢崎が殺された子どもの父親であると認めようが認めまいが、彼は自分の罪の重さに耐え切れるだろうか。楢崎大地の人生はぶち壊さ……



「パパもうやめてっ……わかった」

奈子の目は真っ赤に充血していた。




「すまない……でもヨシキは殺されるよりも辛い現実を通ってきたんだと思う。自分の身に受けた傷を相手にも与える、それが復讐だ……



……かわいそうだよ、ヨシキがっ……

奈子は泣き出した。