この筋書きの結末 (15/31)

大貫の青野は会議室にいた。
2人は席に着き、白神親子が来るように手配されている。

白い蛍光灯の光は、2人以外誰もいない部屋を隈なく照らした。

しばらくするとドアがノックされた。
はい、と大貫が返事をする。



「……パパ」

部屋に入ってくるなり奈子は、不安げな顔をした。

彼女の後に、夏江が入ってきた。
美月を抱いている。


「久しぶりだな……」

元旦那に声を掛けられた夏江は、軽く会釈を返した。


久々に間近で見る元妻は、老けこんでいた。
俺も同じように映ってるんだろうな、と大貫は思った。



「悪いな、こんな結果に終わって。犯人が捕まっていたら手を煩わせなくて済んだんだがな」

大貫は本題を切り出した。

犯人が捕まっていない今、奈子たちはあの家に帰ることはできないのだ。
彼女らには安全な場所に移ってもらう必要がある。



「大丈夫よ、パパ。美月を産むって決めた時からわがままは言わないって決めたから……元はと言えば妊娠したあたしが悪いし」

そう言って奈子は笑った。
決して明るい笑顔ではなかった。


確かに、奈子が妊娠しなければヨシキが家族から切り離されることはなかった。




「そんな事言うな。奈子は悪くない」


そう、もっと元を辿れば……
大貫は夏江を見た。

ヨシキは夏江と大貫の弟である孝俊の間に生まれた子だ。

夏江と目が合った。


「ヨシキが俺の子なら、もっと馬鹿な犯人になってただろうな」

嫌味を込めて言った。



夏江は初めて口を開いた。

「……あなたが家族を顧みずに仕事を選んだ結果よ」



見事に嫌味を嫌味で返された。
部屋は静まった。


夏江の腕に抱かれた美月は、子どもながらに眉間にしわを寄せている。
大人たちの雰囲気を感じているのだろう。



「……まあ、とにかく。別の場所に住んでもらう。生活するのに不便のない場所だ。さすがのヨシキも探す手立てがないだろう」


大貫は娘たちから目をそらした。

事件は解決しないまま終わった。
家族ともこれで終わりなんだろう。