この筋書きの結末 (14/31)
「お疲れ様です……」
大貫が喫煙スペースでタバコを吹かしていると、暗い表情で青野がやって来た。
既に結果は電話で伝えている。
「おう……ご苦労だったな。まあ座れよ」
大貫は自分の隣の席を叩いた。
青野は躊躇いなくそこに座る。
「大貫さん、1本もらえますか」
タバコとライターを手渡した。
「お前、そもそもタバコ吸うのか?」
大貫の言葉を聞き終わるかどうかのところで、青野は咳き込んでいた。
「げほっ……いえ、初めてです」
咳をこらえながら彼は答えた。
「ははは。馬鹿、お子様には早いよ」
大貫は笑いながら、後輩刑事からタバコを取り上げた。
しばし沈黙が続く。
「この後、どうなるんですか……?」
青野が沈黙を破った。
「どうなるって、何がだ?」
「ヨシキ君の似顔絵が作られて、彼は指名手配になって……それで事件は終わりなんですか……結局、犯人であるヨシキ君も目的を達成してないわけですよね」
「それは仕方がない……完全に逃げ果せたんだよ、ヨシキは。指名手配されてから捕まるような馬鹿じゃない……しばらくは姿を消すんじゃないか」
答えながら、大貫は鼻から煙を吐く。
隣では青野が肩を落とす。
「逃げるが勝ち、ですね。そういえば、中村の軽自動車に例のメモがありました」
青野は内ポケットから紙を取り出した。
中村がアユなる人物から受け取ったメモのコピーだ。
『濱岸アユ』と書かれた下に、奈子の自宅の住所が記されている。
大貫はそれを一瞥したが、特にコメントしなかった。
「濱岸アユ……これもデタラメなんでしょうね」
青野はフッと鼻で笑った。
「だろうな。手が込んでるよ」
「ですね」
そう言うと青野はコピーをクシャクシャに丸めた。
「さて、挨拶に行かなきゃな。気が滅入るが」
大貫はタバコを灰皿に投げ入れ、立ち上がった。
これから被害者である金本武雄の自宅に向かう。目的は犯人を捕まえられなかったことへの謝罪だ。
「あれ、奈子さん達にはまだ会ってませんよね?」
「あっ、そうだったな。今から行こう」
2人は喫煙所を出た。