この筋書きの結末 (13/31)
再び署に呼び出された中村は不機嫌を露わにしていた。
「今度は何だよ……」
既に貧乏ゆすりをしている中村。
「もう一度写真を見て欲しいんだ」
大貫は慎重に用件を切り出した。
すると中村は無言で睨みつけてきた。
「まあ、落ち着け。朗報がある。お前の車が発見された」
彼が暴れないように先にエサを撒く。
「えっ、マジかよ。早く返してくれ!」
彼は身を乗り出した。
ここまでは順調だ。
あとは、こちらの用件を聞き入れてくれれば……
「ああ、もちろん返す。その前にだな……」
大貫の言葉に中村は大きなため息を吐いた。
そして口を開く。
「わかったわかった。写真を見ればいいんだろ?」
車が返還されると聞いて、少し機嫌が良くなったようだ。
こちらの用件もなんとか聞き入れてくれた。
この中からアユを見つけてくれ……
願いを込めて写真の束を彼に渡した。
眉間にしわを寄せ、それを1枚ずつ確認し始めた。
しかし、結果は昨日と同じに終わった。
写真の中にアユと名乗る人物は写っていない。
それが結論となった。
我々は負けた。
もう犯人を追う手立てが無くなったのだ。
「ごくろうさん……」
大貫はそう言って、中村に車のキーを渡した。
その言葉はまるで自分自身に言い聞かせたもののように思えた。
中村は部屋を出ていった。
ヨシキは共犯者の手を借り、事件を起こした。
そして警察に白神奈子の捜索を仕向け、まんまと彼女の居場所を入手したのだ。
完全に我々の敗北である。
「終わった……」
大貫は天井を見上げ、独り取り残された部屋で、呟いた。
力なく立ち上がると喫煙所へ向かった。