この筋書きの結末 (12/31)
「青野、お前ならどの子がいいと思う」
大貫は大真面目に後輩刑事に質問した。
青野は大貫が差し出した写真を手に取り、苦笑した。
今見せているのは、殺された金本武雄が所属していたクラスの集合写真である。
先ほど中村に見せたものと同じだ。
「あんまり僕をアテにしないでくださいよ」
軽口を叩きながらもその目は鋭い。
「俺よりお前の方が若いからな。どうだ、どの子が可愛いんだ?」
「はは、勘弁してください……まあ強いて言うなら、この子とか」
青野は写真に写る生徒の1人を指差した。
「なんだお前、ほぼ即答じゃないか。ええと、1列目の1番端の子か……」
そこに写っていた女子生徒は、写真からでもわかるくらい上品な雰囲気が漂っていた。
肩くらいまでの黒髪で、目は猫のようだ。
しかし、『可愛い』とは少し遠いような気もした。
若者の感覚とはズレているのだろうかと自虐した。
「なんと言うか、清楚って感じだな」
大貫は感想を述べた。
「清楚……確かにそうかもしれませんね。彼女の名前はアマハシユキです」
「アマハシ、確かこの子は……」
「ええ、レイプ未遂に遭った佐々木みのりを助けた、というのがこの甘橋です」
「そうだったな、この子が甘橋か」
「中村にもう一度確認してみればわかるんじゃないですかね」
青野は写真を返してきた。
そうだな、と受け取りながら答える。
「あっ、そういえば。中村の軽自動車、見つかったそうです。駅の近くで乗り捨てされていたそうです」
「……そうか、それをエサにもう一度中村を呼び出そうか」
乗り捨てられた軽自動車にヨシキの痕跡が残されていないかを調べ、明日、持ち主である中村に返還することになった。
そして中村から、アユと名乗る人物についての証言を得られなかった場合……
……つまり、集合写真の中にアユがいなかった場合、犯人を追う手掛かりはゼロとなる。
そして、ヨシキは指名手配犯となる。
それはこの捜査の、終わり、を意味している。