この筋書きの結末 (11/31)
「めんどくせえなあ、なんでオレが」
1枚の写真を目の前に、中村は不平を漏らす。
「ぶつくさ言うな。アユって子はこの中にいるだろ」
大貫は中村に写真を見せていた。
そこには東西第二高校の生徒達が写っている。
「いねえって。てか集合写真じゃ顔がちっさくてよくわかんねえよ」
入学、及び進級時に撮られるクラス全体の集合写真である。
校門の前で3列に並んで生徒が行儀よく写っている。
「この中には?」
大貫は次の写真を中村の目の前に出した。
1枚見せては確認、その繰り返しだった。
「うーん……いねえな。おっ、この子も可愛いな」
「馬鹿野郎!余計な事を言うな!」
次の1枚を出した。
今まで見せた写真は15枚目に達している。
「あー、めんどくせえ。あんま覚えてねーんだよなあ実際」
「そんなことないだろ、よく見ろ」
中村は頭の後ろで両手を組み、あくびをした。
正直、コイツは役に立たないかもしれない。
「いねえ、可愛いから見れば秒でわかるって」
大貫は写真を下げた。
そして次の写真に期待を込めた。
「この中には……どうだ?」
尋ねながら中村の表情を凝視した。
彼は退屈そうに片肘を机に突きながらも写真に目を通している。
この写真は金本武雄も写っている。
事件の関係者、共犯者がいるとすれば、このクラスである可能性が高い。
「うーん、」
唸る中村の目の奥が一瞬、光ったように見えた。
すかさず問いかける。
「いたか?似ている子でもいい、教えてくれ」
しかし、中村の返答は期待を裏切るものだった。
「……いねえなあ。なんか飽きてきた、タバコくれ」
と、片手をヒラヒラさせる中村。
彼の真意を測るため大貫は、相手の目を覗き込んだ。
「タバコか、写真の中からアユを見つけられたらやるよ」
「んだよっ!ざけんな!」
中村は暴れ出した。机の端にあった写真の束を乱暴に払いのける。
「落ち着け、わかったから」
大貫はタバコを取り出し、彼の目の前に差し出す。
「いらねえよっ!」
激しく振り払われた手から、タバコが飛んで行った。
どうやら本気で怒っているようだ。
額に血管を浮かせ怒鳴り散らした。
「つーか、オレの車どこいったんだよ!返せぇっ!クソっ!」
ダメだ……中断だ。
機会を改めるしかない。
大貫は中村を解放した。
床に落ちたタバコを拾った。
「クソはこっちの台詞だ……」
彼が最後の望みであるから、少し無理をさせてでも聞き出したかった。
早くシッポを掴まなければ手遅れになる。