この筋書きの結末 (7/31)

数十分後、取り調べを行っていた。

大貫はガラス越しに、例の若者と青野のやり取りに耳を傾けていた。

ガラスが大貫のいる部屋と、取調室とを隔てている。
取調室からはこちらの部屋の様子は見えない仕様になっている。



「なぜあの家を訪ねてきたんだ」

青野は若干の苛立ちを見せながら若者に質問している。


中村というのが若者の名前だ。



「来てくれって言われたから、オレは行ったんだ。あの家に」

少し興奮気味の中村の答えは、こちらが求めているものをなかなか満たしてくれない。

この会話に辿り着くまで時間がかかった。

この中村という若者がヨシキの回し者であることはわかっていた。

こいつからヨシキの情報を引き出すしか残った道はない。





「誰に来るように言われたんだ」

青野が根気よく尋ねる。



「街で会った奴にだよ、オレ何も悪いことしてねえのに何でこんな取り調べされてんの」



「こっちの質問にだけ答えろ!その街で会った奴はどんな男だったんだ?」

さすがの青野も声を荒げた。

こちらとしては、必要な情報を一つ一つ聞き出すしかない。
せめてヨシキが今現在、どんな様相をしているのか、どこで接触したのかだけでも情報が欲しかった。





「はあ?どんな男だったかだって?」

中村も眉間にしわを寄せ、顔をしかめた。
それは青野に対する威嚇的な態度なのかと思った。


しかし、次に続いた彼の言葉に我々は耳を疑った。







「なんでオレが男の家に行かなきゃいけねえんだよ」

中村は人を馬鹿にするように笑って言った。









「お、男じゃないのか……?」

青野も戸惑っている。




「女だよ、オレがナンパした。めっちゃかわいいコ」

ニヤニヤしながら中村は言った。



青野が机を拳で殴った。

「そういう詳しい事を全部話せって言ってるんだっ!」




大貫はため息をつき、部屋を出た。
部下には休憩が必要だ。