この筋書きの結末 (4/31)
一体どういうことなんだ……
奈子も知らない人物……
階段を上り切り、肩で息をしながら廊下に出た。
奈子の家の前では若者が呼び鈴を再び鳴らしたところだった。
大貫はその若者に大股で迫った。
ヨシキじゃない……。
年齢は高校生くらいだろうか。
長めで縮れた茶髪。
耳にはピアスが鈍く光っている。
大貫が近づいてくるのに気がついたらしく、若者がビクリと顔を上げた。
コンマ数秒、目が合う。
若者はすぐに目をそらした。
はやり大貫も知らない顔だった。
少し悪い予感を抱き始めていた……
「君、その家に何の用だい」
出来るだけ警戒させないように話しかけたつもりだったが、相手は後ずさりをした。
「な……なんだよオッサン」
少し強がった口調で若者は答えた。
「君はここの家の人の知り合いなのかい?」
問いかけながらも歩みは止めない。
大貫はさらに若者との距離を詰めた。
「関係ねえだろ」
引きつった頬が、彼の余裕のなさを物語っていた。
不意に若者が大貫の背後に目線を移した。
そして「あっ!」と叫んだ。
大貫は反射的に後ろを振り返ってしまった。
______しまった、騙された。
正面に向き直った時には、若者は駆け出していた。
くだらない子供騙しに引っかかってしまった。