過去、未来。 (4/6)
「地村君、事件のことは警察の人から聞いているのよね?」
私から沈黙を破った。
「はい」
「どう思った?」
「どう……って」
意図のよくわからない質問を始められて、彼は当惑している様子だった。
「僕が言えるのは……奈子の身に危険が迫っているという事、だけです」
私は2度3度頷いた。
それを見て彼は続けた。
「奈子が関わっている事件、つまり、奈子の過去と何か関わりがあるってことじゃないかと思いました」
事件が起きる。
そこには原因があるといいたいらしい。
「そうよ、その通りよ」
私は彼の目を見て断言した。
私を襲った犯人と警察が追っている事件の犯人が同じなら……
私が偶然襲われたのではないとしたら……
私の自信のこもった断言に、地村君の目が見開かれた。
私が何か重大な事を掴んでいると悟ったようだ。
「先生、もしかして……犯人を知っているんですか……」
「私を襲った犯人ならね」
「……それは警察には言ってないんですか?」
彼の慎重な質問に、私は頷いた。
「……なぜですか」
険しい表情で問いかけてきた。
「私たちは、殺されても仕方のないことをしたからよ」
自分でもおかしなことを言っているという自覚はあった。
地村君も髪を掻き毟るようにして、顔を両手に埋めた。
「つまりね、地村君。私は罰を受けないといけないということなのよ。なっちゃんもね」
「罰……」
彼は呟いた。
「そう、罰。何の罰かというと……あの日見ていたんじゃない?私がなっちゃんに『あるもの』を渡した瞬間を」
彼の喉が上下した。
彼は何も答えなかったけれど、それが答えだった。
しかし、次に彼の口から出た言葉に私は言葉を失った。
「先生、じゃあ僕も同じです。僕も罰を受けないといけない人間です。なぜなら……」
「……なぜなら?」
「なぜなら僕は、奈子が先生にもらった『もの』に……穴を開けたから、です」