探偵部の活動日誌② (12/13)
美術室を出ると、廊下に山科と日村が突っ立っていた。
「待たせた、すまん」
僕は2人に詫びを入れた。
「おつかれ」
山科が片手を挙げる。
「帰りましょう篠崎さん」
と日村。
2人ともワケも聞かずに迎え入れてくれた。
「刑事との会話は探偵部の活動日誌に書いておくから、また見せるよ」
おう、と山科が頷く。
「小原さんはもう一人の刑事に連れられたぜ。知ってるかもだけど」
「ああ、詳しい事は何も聞いてないけど知ってるよ。小原さんとLINE交換しとけばよかった」
「篠崎、俺たちに抜かりはないぜ」
山科はそういうとスマホをポケットからチラつかせた。
LINEを交換したらしい。
「小原さんが出て行く前にな、今後の為に交換しといたってわけよ」
得意げに彼は答えた。
今後の為に、か。
「なあ山科、その事だけど……もう僕たちはこの事件から離れたほうがいいらしい」
僕は2人の目を交互に見て言った。
「えっ、なぜですか?」
日村が声を裏返す。
「危険なんだよ、僕たちが想像している以上に。それに僕たちは受験生だ、こんな事をしている場合じゃない。日村には悪いけどいつかこの日は来ると決まっていたんだ……僕は今日で探偵部を引退する」
これは仕方のない事だ。
今決めた。
いつかは引退するんだし……
「それもそうか……推理小説ばっか読んでる場合じゃないな、確かに」
そう言って山科は背負っていた荷物を背負い直した。
そして1人廊下を歩いていく。
僕もその後に続く。
「そ、そんな……急に辞めなくても!」
取り残された日村は珍しく大きな声を出した。
山科が振り返って日村に返事をする。
「日村、3年生は試合で負けたら引退するって決まってるんだよ。俺たちはこの事件に負けたんだ!さ、帰るぞ」
「はい……」
渋々といった足取りで日村が追いかけてきた。
3人で学校を出て、それぞれの帰路に着いた。