探偵部の活動日誌② (11/13)

「地村は奈子が学校に来なくなってから、かなり早い段階でメールを送った。彼氏である楢崎よりも早かったらしい。そのメールは奈子の妊娠について触れているものだった」


刑事は詳しく話してくれた。
複雑な話を整理しながら聞いた。



妊娠を知り得る人物は、恋人である楢崎大地。 そして佐倉先生、の2人のみ。

しかし、奈子は彼氏には妊娠していることを話してはいなかったようだ。

佐倉先生にしても直接的に打ち明けられたわけではないようだ。
実際、佐倉先生は奈子に直接報告を受けたわけではないと話していた。



地村は奈子と楢崎が付き合っていたという状況と、奈子の不登校を結びつけ連絡したのだという。


ちゃんと自分のことを気に掛けていてくれたという安心感から地村を信頼した、と奈子は言っていたようだ。



その後、奈子は連絡先を変えたが、地村にだけは新しい連絡先を伝えていたのだ。



「そういう訳で、奈子の居場所を突き止めることが出来た。犯人の思惑通りではあるが……一般人に人探しは案外難しいものだ。随分長く喋ってしまった、再三言うが、他言無用でよろしく。篠崎君」

刑事は少し咳き込んだ。
話疲れている様子だった。




「犯人に奈子さんの居場所を知らせた後は……どうするんですか?」

僕は率直な質問をした。



「犯人がその場所に現れるまで頑固に待つ、ただそれだけだ」

さらに疲れた表情を作り、刑事は答えた。



「犯人の目星もないままに、待つことしかできないんですか?」



「そうだ。何遍も言うがこれは君たちの出る幕じゃないぞ。だからこそ、ここまで話しているんだ」

刑事は少しだけ頬を緩めた。
しかし、こちらに意見させない凄みが常に漂っている。



「それは、わかってます……」



「犯人の目星、か……君は誰だと思う」

大貫刑事は僕の目の前に置かれている紙に手を伸ばした。
先ほど話に出てきた3人の名前が書かれた紙だ。




「えっ、まさかこの中に……?」



刑事は紙の上で指を滑らせ、ある人物の名前の所で動きを止めた。






「……っ!」

僕は眉間にしわを寄せ、その名前を凝視した。




「……共犯がいるなら可能性は、ある」

大貫刑事がそう言った直後、着信音が鳴り響いた。
刑事がポケットからケータイを取り出す。





「大貫だ。青野か、どうした______何っ……?」


ケータイを握り話している刑事の顔はみるみる険しくなっていった。




「篠崎君、話はここまでだ。小原さん達は我々が家まで送り届けるから安心して、君たちはもう帰るんだ」

慌ただしく席を立ち、大貫刑事はドアを開け放ち、部屋を飛び出していった。



刑事が開け放ったままのドアからは、寂しい夜の風が流れ込んできた。



僕たちの事件に終わりを告げるように、下校のチャイムが鳴った。