探偵部の活動日誌② (9/13)
「手紙と依頼文が書かれたメモ帳のどちらからも同じ人物の指紋が検出されている。佐々木みのりという生徒の指紋だ。メモ帳も彼女の私物であることが確認されている。私の言いたい事はわかるね?」
「その佐々木という生徒は利用された……?」
「その通りだ。我々を撹乱させるイージートラップ。犯人の本当の狙いは、金本武雄殺害事件と依頼文の件が関連しているという事を示す事だったんだ。ここで犯人の計画の目的が見えてくる」
大貫刑事は口を真一文字に閉じた。
重要な話が告げられる予感がした。
僕も生唾をゴクリと飲む。
「犯人の目的は、警察に白神奈子を探させる事……そのために生徒たちの人間関係を利用し事件を、起こしたのだよ」
刑事の言葉は震えていた。
その震えは恐怖か、悔しさか……
警察は金本を殺した犯人を捜査する。
しかし、犯人を突き止められない。
そこに依頼文が唯一の手掛かりとして現れる。
警察が犯人に接触を図れるチャンスがその依頼文には書かれていた。
それが白神奈子。
彼女の所在を突き止め、彼女の居場所を犯人に告げた時こそ、犯人逮捕の最初で最後の機会になるのだ。
確かに、普通に人を探したくて警察に捜索願を出しても、大掛かりな捜査などしてくれないだろう。
ましてやなんの事件にも関わりがなければ尚更のこと。
しかし、犯人は考えた。
事件を起こし、その事件を解決する方法として捜索願を出した。
その捜索願が依頼文だ。
そして、警察に残された道は「白神奈子を探す」だけになるのだ。
「さっき君のPCを借りて犯人にメールを送信した。それもこれも全て犯人の計画通りの事なんだ……くそっ!」
刑事は拳を固め、机を叩いた。
その握り拳には、怒りが込められているように感じた。
「取り乱してすまない……」
刑事は拳を解いた。
「いえ……それで、犯人にはどういう内容のメールを、送ったんですか……?」
「嘘偽りなく、奈子の居場所を表記した。君たちには申し訳ないが、探偵部を装って文章を作らせてもらった」
「いえ、それは構いませんが……結局のところ、奈子さんの居場所を突き止めることが出来たんですね?」
「ああ、突き止めた。次はその話をしよう……その前に、疲れていないかい?」
人の心配している場合では無いですよと言いたくなるほど、刑事の顔は疲れていた。
「大丈夫です」
僕は姿勢を正し、気丈に振る舞った。
刑事は頷き、口を開いた。
「私にとっても辛い捜査だった……まず我々は奈子の通っていた中学校に赴いた。そこで奈子の素顔と居場所の手掛かりを手に入れた。大きな犠牲も出たが……まあ順に話そう______」