探偵部の活動日誌② (8/13)

「金本武雄が殺されずとも警察沙汰の被害に遭えば、犯人探しが始まる。容疑者として疑われるのは誰か……



「金本に恨みがある人物、つまり、日村……ということですか」


日村は金本にいじめられていた。



「そうだ。被害者の人間関係が洗われる。日村君が第一発見者ではなくても、彼は疑われる対象となっていたわけだ」

語っている刑事自身も苦しいはずだった。
しかし、僕に事実を伝えようと刑事は説明を続けた。


「我々が日村君に辿り着いた時点で、犯人の仕込みが発動する」



「仕込み……それが『依頼文』ですね」

僕は話に同調し、促した。
刑事は大きく頷く。



「その依頼文に使われたメモ帳。そして、金本君を現場まで誘き寄せた手紙が書かれたメモ帳。この2つが一致する」



背筋が寒くなった。
犯人を恐ろしいと思った。

日村と金本がトラブルを起こした事も、犯人にとっては嬉しい誤算だったに違いない。

いや、こうなる事も犯人の想定内だったのではないかとさえ思えてくる。


2人の間でトラブルが起きていなくても、警察は日村の元を訪れ、日村のアリバイを調べれば依頼文に辿り着いたのだ。

殺害時刻には、僕たちはここで依頼文の事について話し合っていたからだ。


殺害時刻に何をしていたかという質問をされれば、依頼文の話が表出した。



仕込んだ依頼文も、タイミングも……恐ろしすぎる……

僕は寒さに耐える時の様に、両腕をさすった。
犯人の怖さに肌が泡立った。



「怖いかい?」

大貫刑事が僕に問う。



「はい、犯人は僕たち生徒の人間関係を上手く利用しています……そんなこと有り得ないはずなんですが、現にこうして犯罪は起きました……

僕は胸に溜まった恐怖心を吐き出した。



「偶然では片付かないだろう? これは全て犯人の計画なんだよ」





……全て犯人の計画。



刑事の口から改めて聞かされると、全身に鳥肌が立った。



「我々警察が『依頼文』に辿り着くと、犯人の計画は次の段階へと進む」




怖い……

僕は自分の手が震えていることに気がついた。