探偵部の活動日誌② (7/13)

「そして、あとは大量の水を被害者の顔に掛けるだけ」

語る大貫刑事の目は険しい色を帯びていた。
刑事は僕に犯人の残忍さを伝えているんだ、と感じた。



「そんなに大量の水、どうやって……



「掃除用具入れには水道が取り付けられている。そこにはホースも当然あった。大量の水を出すには事欠かない現場だったというわけだ」

僕の質問に答えた刑事は悲痛な顔をしてため息をついた。



ホースか……
全く考えつかなかった。




殺害現場をイメージする。

被害者の顔に掛けられる水。
ホースから止めどなく流れる水流。


ぞうきんを詰め込まれた口と鼻から被害者の体内に水が入り込む。


無論、被害者は咳き込む。


しかし、水を含んだぞうきんで塞がれた口から排水することは出来ない。
自ずと鼻から水が溢れ出す。

吐けば吸う。
それが人間の身体の仕組み。


被害者が水を吐いた次に吸い込むものは酸素ではなく水……


肺に残された酸素は自乗して無くなっていく……




気を失っていた金本も覚醒し、絶望しただろう。
目を充血させ、必死に呼吸をしようと足掻く人間を想像した。





大貫刑事を見る。
刑事も目を伏せ、何事かを考えている。

残酷な犯罪に心を痛めているのだろう。






「残酷すぎます……でも、なんでそんな方法を選んだんでしょうか」

改めて浮かんでくる疑問をぶつけた。



「そこなんだよ。ここで殺害方法と、なぜ金本武雄なのか、そして犯人に殺意はなかったという説が関係してくるんだ……結論、犯人は殺人事件ではなく警察が動くような事件を起こせばよかっただけなんだ。それの理由は……




明かされていく真実、僕は耐えることが出来るだろうか……